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古くから山には、怪異が潜むと言われます。
それらは時に旅人を惑わせ、俗に言う『神隠し』を生むのかもしれません。
今回はそんな「山の怪異に捕らわれかけた女性」のお話。
では、どうぞ。
数年前、山を歩いてたら変な人に会いました。
道の真ん中で40程の女性が震えてて、通りかかると「一緒に下山して下さい」って泣きながら頼むんです。
その様子が尋常じゃないので、何か事情があるのだろうと快諾しました。
歩きながら訳を聞いたのですが、私の言葉には反応してくれません。
山を下りるまで私の裾を掴んでいて、しきりに念仏(メチャクチャですが)を唱えているようでした。
山を下りきったとき、「大丈夫ですか?」と声をかけたら、
恐る恐る周りを見回して「あぁーーー」といって
崩れ落ちてしまいました。
肩を貸して休憩所を兼ねてるみやげ物屋に入って話を聞いてみました。
その女性があのあたりを通りかかったときに、
どこからともなく、わらべ歌のような歌声が聞こえたそうです。
見回しても誰もいなく、気のせいだと進んでいくと、
いつの間にかまた元の場所に戻っていて、再び歌が聞こえる。
歩くとまた戻る。
だんだん歌声が近づいて来たとか。
しかも、だんだん相手の声に歓喜が混じってきた。
歌は数え歌らしく、近づいてくるごとに内容が聞こえるようになり、
「よっつ、よみじはぬけだせぬ。ひがくれ、たそがれ、いのちくれ」と
数えられたところで恐怖で動けなくなり、
そこに私が通りかかったそうです。
私の知る限り、その山は特に変な言い伝えもなく
普通の観光名所です。
そのみやげ物屋の老いた店員さんも、そんな話は知らないと言います。
すると、一緒に下山してあげた女性は、
「以前、同じように立ちすくんで居る人を助けてあげたことがある」
とポツリと語りました。
私はちょっと嫌だな、と思いました。
それ以来、1人で山には入ってません。
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