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「綺麗な桜の下には死体が埋まっている」
なぜ、死体が埋まっている桜は綺麗なのか。
死体は伝えようとする。『自分を見つけて』『自分を見て』と。
桜でなくても、これは同じ。
非業の死を遂げた死者は、自分を見つけてもらうために、その周りを一層華やかにするのです。
では、どうぞ。
20年以上前、小学校低学年の頃の体験談。
両親の田舎が瀬戸内海にある島なんだけど、毎年夏休みになると帰省してた。
東京育ちの自分には、綺麗な海やら山やらで遊ぶのが物凄く楽しかった。
一番楽しみだったのは、東京ではデパートくらいでしかお目にかかれないカブトムシやらクワガタやらを、
近くの山でザクザク捕まえられる事。
その山には結構大きめの池があって、子供だけで行く事を禁止されてたんだけど、
貴重なお盆休みの、しかも早朝から虫取りなんかに付き合ってくれるような大人がいなかったんで、
その日も朝4時前から、一つ年上の従兄弟と一緒に山に突撃。
暫く二人で夢中になって虫取りしてたら、どこからかシュッシュッて感じの音が聞こえる。
最初はなんか虫とか鳥の声だろと気にしてなかったけど、よく聞いてみると、どうも子供のすすり泣きっぽい。
同じように虫取りにきた子供かな?まだ薄暗いから転んでケガでもしたのかな?と思って、従兄弟と一緒に泣き声のする方向に向かっていったら、
池の淵で、3~4歳くらいの子供がシクシク泣いてる。
周りには誰もいない。流石にこんな小さい子が一人でいるっておかしいだろ?と子供心に思ったんだけど、それより妙だったのが、
その子の腰の辺りに括られた帯みたいなヒモが、池の中にまで延びてる。
そのヒモを目で追ってみると、何かがプカプカ浮いてる。
そこからもヒモが延びてて、少し先に同じように浮いてる物に繋がってる。
そんな感じで、数珠繋ぎに1.5m間隔くらいで、合計6個の何だかわからん物が連なって池に浮いてる。
なんだこりゃ?と思ってたら、それまで弛んでたヒモがピン!と張って、子供が池に引っ張られてく。
あっ!と思ったその瞬間、体が動かなくなった。視界の端で、従兄弟も同じように固まってるのが分かる。
金縛りとかって概念がなかったから、軽くパニクってた。
やばいやばい、あの子何に引っ張られてんだ?もしかしてワニ?ワニって日本にいたっけ?
じゃ妖怪だ!助けて鬼太郎!
そんなアホな事考えてるうちにも、子供はどんどん池に向かってるんだけど、その動き方に何か違和感を感じる。
人間が歩く時って当然足が動くはずなのに、その子は一切足を動かしてない。
氷の上を滑るように、ゆっくり池に向かってる。
アホな自分は、やっぱ妖怪パワーで引っ張られてる!という結論に達したんだけど、流石に従兄弟は一つ年上だけあって、リアルでこの世の者じゃないと気付いたんだろう。
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と唱え始めてた。
結局、子供が完全に池の中に消えたと同時に体が動くようになり、一目散に山を下りてった。
家に帰って、大人達にさっき見た光景を話したんだけど、興奮してるもんだから要領を得ない。
大人達も、最初はどっかの子供が溺れたんじゃないかと思って、慌てて消防団とかに連絡しかけたんだけど、オレが「妖怪の仕業だ妖怪の仕業だ」って妙な事言うから、少し落ち着かせて、オレから細かい話を聞き出した。
そしたら信じられないって顔しながらも、何か思いあたる節があるのか、
オレと従兄弟を庭に連れ出して、塩を振りかけ始めた。
一応消防団には連絡して人を見に行かせたらしいけど、特に何もなかったらしい。
結局その後は、大人達にどうだったか聞いても、寝ぼけて夢でも見たんだろってはぐらかされるだけ。
何年も後にようやく聞き出したのは、
件の池で何十年も前に、ある一家が入水自殺をしたって事。
時間帯はやっぱり3時~4時位だった事。(近くの民家の人が、子供の泣き声を聞いたらしい)
その人数が7人だった事。
その際に、全員がヒモで体を繋いでた事。
地元の人達の間では、その池は別名『七人心中の池』って呼ばれてる事。
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